令嬢薔薇図鑑

Ali Project( アリプロジェクト ) 令嬢薔薇図鑑歌詞
1.令嬢薔薇図鑑

作詞:宝野アリカ
作曲:片倉三起也

召シマセ 艶薔薇
ヨリドリミドリ イロトリドリニ

わたしたちを束ねて
絹のリボン結けば
着飾ったドレスも霞むわ

紳士の腕のなかで
うっとりと開くのよ
どんな甘い恋さえ敵わない

楽園のイヴも
太古の女王も
眠る姫君も皆
わたしを愛したの

馨しく交歓しましょう
仄かに染まる指は舞って花びら
たおやかに包んだ夢は
いつか溢れる蜜のように
黄金に満ちる

世界は美しい

画家たちは競うように
この姿を描いた
文士たちは言葉に留めた

歴史浸す悲劇や
戦場の荒れ野にも
静かにわたしたちは薫る

甲冑の少女も
非道の悪女も
乞食の娘も皆
わたしを抱きしめた

触れあって交感しましょう
哀しみ恐れ祈り すべて分け合い
熟みながら真っ赤な棘は
傷つく胸を塞ぐために
巻き付いてゆく

契りの一刺しを

召シマセ 艶薔薇
ヨリドリミドリ イロトリドリニ

馨しく交歓しましょう
緑の茵 月の侍る揺りかご
やわらかに夢を喰むのは
厳かに血の通う蔦と天鵞絨の舌

秘めやかに交配しましょう
あなたは生まれ変わる 新種の薔薇に
愛惜しく種を蒔きましょう
どんな時代(とき)でも
わたしたちが咲き添う限り

世界は美しい


2.ローズ家の双子達

作詞:宝野アリカ
作曲:片倉三起也

きらきらと歩くのよ
フリルのパニエ
花散らすように翻しながら
ああ可憐 どこまでも

くるくると踊る影
レエスのパラソル
白い靴の下で回る
回転木馬の地球

世界はローズガーデン
蕾付けたアーチつづく

くぐるたび絡みつく
翡翠のツルとトゲが

何度も春は来る
わたしたちは成長する

甘い血を吸いながら
咲く紅ばらと同じように

清く美しく
ちょっぴり意地悪く
女の子に生まれたのなら

りんりんと歌うのよ
シャム猫抱いて
リボンの首輪に鎖はいらない
ああ高貴 自由なの

らんらんと輝ける瞳が選ぶ
綺麗なものだけを喰んで
このココロは生きている

唱える花言葉
わたしたちは知っているの

どれほど光満ちる

未来(あす)より今が幸せか

めくる包み紙
かじる砂糖菓子
味見をするより食べきって

くらくらと恋をする
シルクハットのウサギ
飛び出して行方不明なの
ああ無情 戻らない

はらはらと泣いてみる
こぼれるハニー
濡れたくちびるはベエゼと
嘘つくためにあるけど

胸にある紋章は
永遠のばら

きらきらと歩いてく
フリルのパニエ
花散らすように翻しながら
ああ可憐 どこまでも

くるくると踊る影
レエスのパラソル
白い靴の下で回る
回転木馬の地球

りんりんと歌うのよ
カナリアのように
銀の篭は月の光ゆく舟
ああ優雅 渡りましょう

らんらんと輝ける瞳は宿す
どうか今はまだ綺麗なものだけ
神さま見せて


3.隼の白バラ

作詞:宝野アリカ
作曲:片倉三起也

いまは錆び付く 隼の
操縦席に手向けしは

真白きバラ 大輪の
手折られたとて瑞々しく

白雲くぐって
散りし人の 命のよう

幾千万の苦しみ哀しみを葬り
その礎に成り立つ 平和という塔
のぼり続けるのならば忘れることなかれ
この国を護る英霊
祈りの中で
いつも見つめていると

故郷に宛て書く遺書に
滲む文字の 父母上

老いし彼らもとうに亡く
空の彼方で 共にあらん

過ぎゆく時代の先に
生まれ変われるなら

いつか記憶は薄れて
それは遠い世界の戦の話のように
語られるのだろう
でも我々はひとつの大きな魂が
流した血を授けられて
新しい生
明日へ繋ぎつづける

今年もまた静かなる 夏の日が訪れ
気高さと儚さ併せ持つ 花が咲き
強さと誇りを乗せてはばたく 禽が征く
この国よ美しくあれ
正義に生きる
人の姿のままに


4.薔薇娼館

作詞:宝野アリカ
作曲:片倉三起也

濃紅へと沈む夕べに
土に撓まぬまま
少しずつ朽ちるのは

また一片の花弁
また一輪の薔薇
蒼ざめ浮き立つ
かつての純白

まだ薫りは仄かに
まだ記憶を留めて
すべて甘やかに
忘れよと告げるように

いま私は妬ましい
花の季が

硝子を伝わる水滴眺め
凍えることのない
肌を抱く爪は棘

指先を触れもせず
囁きも交わさずに
遠離る影を
目を閉じ追っても

瞳から植えられて
胸の奥で何度も
開こうと藻掻く
一塊の赤い芽を

恋と呼んで
慈しめばいいのですか

まだ一片の花弁
まだ一輪の薔薇
外は騒ぐ風
通り過ぎる修羅

なお薫りは立ち篭め
もうひとつあとひとつ
この身の代わりに
散り果ててゆくがいい

溜息も零さずに
叫び声も上げずに
ただひとりの名を
塗り込め差す紅

ここは蔦の蔓延る
熱の籠もる温室
咲きも枯れもせぬ
わが薔薇だけの為の

誰かの手で織り込まれた
造花のような


5.朗読する女中と小さな令嬢

作詞:宝野アリカ
作曲:片倉三起也

最後の朗読をしましょう
お嬢さま
いつものように暖炉の前
人形抱き 凭れ
お聞きなさいませ

妖精 スミレ
冠 お城
きれいで気高い王女なら
茨の鎖に巻かれても
かならずや
ほどかれる

お屋敷 嵐
オオカミ 暴動
木の棒 打たれて叫ぶのは
火の粉に 焼かれて呻くのは
誰でしょう
おいたわしい

夜毎お聞かせした
童話を お嬢さま
いつまで憶えておられよう
私はもう今宵限り
忘れます

夜明けには黒い
馬車が迎えにくる
あなたの一族
を乗せるために
止められない物語
歯車を回し


6.少女と水蜜桃

作詞:宝野アリカ
作曲:片倉三起也

幾つになったら少女と
呼ばれなくなるのでしょう
母さま わたしはもうとうに
大人になってしまったの

春の節
緋毛氈 敷いた部屋の

段飾り雛遊び
ひそかな囁き
しずかに人形たちの
目が見下ろす

庭の隅で莟の
桃の木が軋む
傾く屏風の中へ
吹く風にひとひら
舞って落ちる 紅い影

人生はいたづらですか
選べぬおみくじのよう
母さま 不幸なあなたと
同じでもいい子でいます

点す炎
仏さま 浮かぶ お顔

白い畳紙の上
散らばる黒髪
いつでも優しい指で
結われていた

果実に巣喰う虫の
そのおぞましさを
憎み尽くそうとしても
胸だけに仕舞って
少女のままで 在るために

たとえ貴女
知っていて
黙っていても

段飾り雛遊び
たおやかな微笑
わたしはあの人形に
なりたかった

庭の隅で盛りの
青い枝に今
甘やかな蜜も持たず
固い果肉のまま
実って落ちる 桃ひとつ


7.黒百合隠密カゲキダン

作詞:宝野アリカ
作曲:片倉三起也

こんな醜い世の中で
演じつづけようなどマゾヒズム
こんな愚かしい世間を
渡り合ってみるのならサディスティック

みんなホントに信じてるの?
人は誰でも平等だなんて
左倣えのよい子たちは
その他大勢ネズミ役で充分

さぁそろそろ
マシな脚本
書いてくださらない?

カワイイだけが取り柄なんて
天然なのがビトクなんて
無能の主役にはうんざり
愛とか謳ったり

白雪姫の魔女のような
赤頭巾の狼のような
お菓子の家の老婆のような
素敵なあなたがいい

華やかにどん底を!

中味アタマが大事だけど
見た目伴わなくっちゃダメだわ
磨き着飾り参りましょ
ここは自分のためのステージよ

ねぇそもそも
誰も上手く
踊れるわけじゃない

サルより美人な女より
ヤギより優しい男より
くだらぬハッピーエンドより
愛憎悲喜劇を

バラ鞭打つ女王様のように
四つん這いの奴隷のように
お花を喰むロリヰタのように
化けられる君がいい

陰惨に絶頂を!

終幕前は暗転のまま
終幕前は暗転のまま
黒百合薔薇の
見事なヤミの中

安手のお涙頂戴の
押しつけ感動物語
つまらぬ司会にもげんなり
善とか語ったり

明るい未来は絵空事
波瀾万丈は他人事
唯一無二のアタシたちが
作れば本物の
世界だわ

偽りのない舞台


8.南無地獄大菩薩

作詞:宝野アリカ
作曲:片倉三起也

彼岸の曼珠沙華
境界隔てよ焔坂
足元掬うは
泥濘るむ泥か盛る花か

生きようとした
伸し掛かるほどに業重く
救われたいと
思うたびにこの身は沈む

蠢く一寸先より いま此処
逃げども行けども昇れど転がる
嗚呼われ地獄
燃える腕
の抱擁

場末の毒罌粟
滴る露は恋の腐臭
五臓に沁みるは
苦汁の血反吐か甘蜜か

愛そうとした
爛れてゆくまで欲深く
赦されようと
すがるたびにこの身が果てる

無常の
闇こそ溢れる極彩
追えども行けども塗れて堕ちれば
嗚呼南無地獄
笑む菩薩の掌上

蠢く一寸先より いま此処
逃げども行けども昇れど転がる
嗚呼わが地獄
凍える舌の接吻

無常の
闇こそ溢れる極彩
追えども行けども塗れて堕ちれば
嗚呼南無地獄
笑む菩薩の掌上


9.見ぬ友へ

作詞:宝野アリカ
作曲:片倉三起也

あの空を見上げて思うんだ
ぼくらの棲む星の大きさを

たとえ塵のように小さくとも
誰もその中心に立っている

ぼくはいま ひとりぼっち
分かり合う 人もなく
語り合う 声もなく
でもぼくは あたたかい

きみになら 伝えたい
ここにある 虚しさを
ささやかな よろこびを
見ぬ友よ 見ぬ友よ

きっと出会うことはないだろう
知らない言葉 見知らぬ瞳

でもいつか学ぶかもしれない
きみの神様や国のことを

ぼくはただ ひとりぼっち
かこわれて 守られて
わけもなく 不幸でも
餓えもなく 恥もなく

きみのこと わかるかな
そこにある 絶望を
そのなかの よろこびを
見ぬ友の 見ぬ友の

憎み合うこともなく
殺し合うこともなく
巡り会おう 見ぬ友よ
ぼくのまだ 見ぬ友よ

いつかこの星は 滅ぶかもしれない
世界が終わるとき すべてがようやく
ひとつになるのだろう
ぼくたちもみんなおなじに
消えてゆくんだ


10.いにしへひとの言葉(instrumental)